なんで今まで気づかなかったんだろう。
この十数年の「答え」に、鳥肌が立って、涙出そうなくらい興奮してる。
だから何かが変わるって訳じゃない。
でも、たまに思い出すその人を追いかけていた自分がいること。
一方通行でも、僕には大切な思い出に変わりはないんだ。
さて、今回はこの何とも言い難い一大スペクタクルを二回に渡ってお送りしようと思います。
前もって断っておきますが、全て本当の話です。
と、その前に少し昔話を。
多分ここにちゃんと記すのは初めてだと思うんだけど、僕は小さい頃から絵や漫画を描くのが好きだった。
小学校時代は授業で描いたものや、大会的なスケッチで賞などを頂いたりして、デパートの子供の絵展示会に飾られたこともあった。
自分としては別にそういう所を目指す気持ちは皆無で、ただ純粋に頭に描いたイメージを絵にするという行為が大好きだった。
例えば、授業で昆虫がテーマの時、カブトムシを描いた。
カブトムシと同じくらいの大きさの子供が二人。一人はカブトムシにまたがり、一人は角を掴んで空を飛び回っている。そんな絵。
担任の先生が家庭訪問で、本格的に絵を習わせてみたら、なんて話をしていたのを良く記憶している。
その影響かどうかはわからないけど、いつからか漫画家になりたいという夢が膨らんできた。
鳥山明が大好きで、彼が書いたヘタッピ漫画研究所という本がバイブル。
高学年になりクラブ活動は迷わずイラストクラブを選んだ。
そこで出会ったのが今回の主役、村田先輩その人だった。
彼は小学生のレベルを遥かに凌ぐ画力と発想力を持っていた。
小学生ながらに、彼の漫画を見て自分の絵がいかに平凡かを思い知らされたものだ。
プロのペンさばきというものは、正に芸術的で見る者を魅了する力があると思う。
彼もそのくらい並々ならぬセンスを持ち、漫画にかける情熱が凄まじい。
彼がペンを動かすと彼の周りにはいつも皆が詰めかけていた。
丁寧で、それでいて躍動感があって、構図も僕には到底描けない。
自信を失った反面、彼のようになりたいという気持ちも芽生えた。
何回目かの時、ちょうど彼も好きだった鳥山明がきっかけで話す機会ができた。
それからクラブの時は、その少しの時間で邪魔にならないよう精一杯色々なことを教わった。
今でも村田先輩が描いたキャラクターを覚えている。
シンプルなんだけど、表情豊かでとても愛着の湧くデザイン。
そのキャラクターのパラパラ漫画は実に斬新で、立体的だった。
学年が違う事もあり、村田先輩と話せるのは週一回のクラブ活動一時間、その中でのたったの数分。
僕はいつも待ちわびていた。
今考えるとそれを全て足しても本当にちょっとの時間だったなと思う。
案の定、そんな時間はあっという間に過ぎる。
そして、彼との別れが訪れた。
転校してしまうとのことで中学でも一緒になることはなく、当時イラストクラブで一緒だった友人とお互い描いた漫画を見せ合ったりしては、村田先輩の話をした。
それからは、そんな良い思い出も時間と共に少しずつ記憶の片隅に追いやられていった。
その頃、ロックマンというゲームが流行っていて。
ロックマン2からは登場するボスキャラクターのアイデアを一般募集するようになり、大きな話題になっていた。
自分が考えたキャラクターがゲームになって動くんだから応募しない訳がない。
当たり前のように僕も友人や従兄弟と一緒になって~マンをハガキ一面に描いて送ったものだ。
ロックマンはひとつの作品に8体のボスキャラが登場するので、毎回シリーズ毎にチャレンジしていた。
そんな折り、その作品も四作目に突入した頃、僕のもとにひとつのニュースが舞い込んできた。
それを自分の目で確認した瞬間、自分の応募したキャラクターが選ばれなかった事なんかどうでもよくなるくらい嬉しかった。
そう
採用されたボスの応募者に「その名前」はあった。
つづく