名前だけでは同性同名の違う誰かかもしれない。
しかし次の瞬間そんな疑いは吹き飛んだ。
当選アイデアを元にデザイナーが書き下ろしたゲーム用デザインとは別に、ハガキの原画も掲載されていたからだ。
まさしくそれは彼の絵だった。
根拠は、と聞かれれば答えようがないが、僕の脳裏に焼き付いていた彼の線のタッチや、ポップさ、表情のそれに絶対の確信があった。
ダストマンというキャラクターだった。
さらには、その一年後に発売されたロックマン5でも彼が作り出したクリスタルマンというキャラクターが採用された。
勿論、遠く離れた地だけれど、人知れず友人と感嘆した。
そして、このクリスタルマンが僕の最後の先輩の思い出になった。
高校生になる頃には次第に絵や漫画を描くことが少なくなっていた。
学校や部活が忙しいのもあり、何より他に夢中になるものを見つけてしまったからだ。
なので当然、漫画家になりたいという夢も何時の間にかどこかへ置いてきてしまっていた。
それから数年の月日が流れ、村田先輩の話といえば本当に極まれに友人と「驚異的に絵の上手い先輩いたよね」「今何やってるんだろね」程度のもので、彼の絵のインパクトすらも時間の流れは薄めていった。
昨日、なんとなくCAPCOMのホームページを覗いたんだ。
偶然なのか何かの力なのか、最初に目についた見出しがロックマンだった。
というのもロックマンは昨年12月で誕生20周年を迎えたらしい。
そこには初代からの余りに懐かしいドット絵や、シリーズのヒストリーがズラリと並んでいる。
ふと、大人になってからは忘れかけていた記憶の断片が甦ってきた。
もう何年間しまい込んでいたのかもわからない。
そういえば漫画家とかになったりしてないのかな。
本当にただの好奇心だった。
もしかたら何かしら引っかかるんじゃないかくらいの軽いノリで、
ダストマン と 彼の名前
で検索をかけてみた。
一番最初にヒットしたページがWikipediaだった。
今でこそ読む漫画の数は減ったものの、小学生の頃からずっと週刊少年ジャンプは愛読している。
中でも毎週楽しみにできる数少ない漫画のひとつ。
連載が始まった五年前から、いやその前の読切の時から勿論読んでいた。
でも、この五年間微塵も気づかなかった。
村田雄介
日本の漫画家
作品
アイシールド21
もう、知った後だから何とでも言えるんだけど、改めて今週号を読み返してみてね。
あぁ、そうか。って。
こんなに近くにいたんだ。って。
数年前から、仕事なり趣味でまた絵を描くようになった。
彼から教えられた事は本当に少しだけれど、今もなお確実に僕の中で生きている。
この一生のうち、いつかもし会うことが叶うなら、クラブで描いたあのキャラクターの名前を教えてほしい。